エンターテインメント株は実力相場へ -面白いという期待を超え続ける企業だけが生き残る世界 -

投資

以前このような記事を書きました。

日本株があがっており、そのけん引役はエンタメ企業が引っ張っている。代表的な企業9社の時価はなんと57兆円もあるそうです。(※2025年7月時点)

世界的に日本コンテンツの需要がめちゃくちゃ高まっていること、さらにエンタメ産業が為替や関税などマクロショックに強く、「防御的」な性格に加え、IPを生かした継続的収益構造 → 投資マインドに好意的に映っているということで株が買われているとのことでした。

しかしそれが、2026年にはいりだいぶ様相が変わったらしいのです。

出典:日経新聞 エンタメ株、実力相場へ 短期勢流出で過熱感一服 長期勢、IP期待で買い

エンタメ相場は実力相場へ 期待は膨らみ続ける

この日経の記事の見立て、かなり本質を突いていると思う。

「実力相場へ」という言葉、これは優しい表現に見えて、実は相当シビアですね。

翻訳するときっとこうなるでしょう。

『夢だけではもう評価されない』という、まさしく宣告。

エンタメ株はこれまで、
IP(知的財産)を持っている
世界にファンがいる
市場が拡大している
という物語でプレミアムを乗せてもらってきたと思うのです。

それが2025年末という時間軸では、その物語はすでに一巡してしまっています。

成長性への懸念、これは単に「もう伸びないかも」という話ではないでしょう。

まさしく、伸び続ける前提でつけられていた株価が、いま問い直されているということなのです。

過去と現在の配当利回りは以下のようになっています。

※2025年7月時点

企業名(証券コード) セクター 時価総額 配当利回り(予想)
ソニーグループ(6758) 電気機器(エンタメ) 22.5兆円 0.68%
任天堂(7974) その他製品(ゲーム) 17.0兆円 0.98%
バンダイナムコHD(7832) その他製品(ホビー・ゲーム) 3.05兆円 1.75%
コナミグループ(9766) 情報・通信(ゲーム) 3.00兆円 0.82%
カプコン(9697) 情報・通信(ゲーム) 2.37兆円 0.90%
ネクソン(3659) 情報・通信(ゲーム) 2.33兆円 1.06%
サンリオ(8136) 卸売(キャラライセンス) 1.64兆円 0.84%
東宝(9602) 情報・通信(映画・映像) 1.43兆円 1.05%
スクウェア・エニックスHD(9684) 情報・通信(ゲーム・出版) 1.23兆円 1.28%

※2026年2月10日時点

企業名(証券コード) セクター 時価総額(概算) 配当利回り(予想)
ソニーグループ(6758) 電気機器(エンタメ) 21.9兆円 0.70%
任天堂(7974) その他製品(ゲーム) 11.6兆円 2.03%
バンダイナムコHD(7832) その他製品(ホビー・ゲーム) 2.75兆円 1.75%
コナミグループ(9766) 情報・通信(ゲーム) 2.8兆円 0.98%
カプコン(9697) 情報・通信(ゲーム) 1.75兆円 1.22%
ネクソン(3659) 情報・通信(ゲーム) 3.8兆円 1.20%
サンリオ(8136) 卸売(キャラライセンス) 1.2兆円 1.31%
東宝(9602) 情報・通信(映画・映像) 1.4兆円 1.31%
スクウェア・エニックスHD(9684) 情報・通信(ゲーム・出版) 1.05兆円 1.51%
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うーん、やはり成長投資を優先しているので配当利回りは低いですね。まぁ当然と言えば当然ですが、企業が成熟していくにつれて配当利回りも上がってくるでしょう?! 

エンタメは株価を上げるうえで、構造的に厳しいものがあります。

ヒットが出ないと数字が出ない。
ヒットが出ても一過性になりやすい。
制作費は年々上がる。
人件費もマーケ費も下がらない。

つまり、下方には硬く、上方には不安定

投資家から見ると、かなり神経を使うビジネスモデルなのです。

そこに日経が書いている、「新作などの販売が市場の期待を超え続けなければならない」

という一文が重くのしかかってきます。

これ、冷静に考えると異常な要求だと思います。

毎回、前作以上
毎回、想定以上
毎回、世界を驚かせる

人間にも企業にも、そんな持続力は本来ないと思うのです。

それでも株価を維持するためには「超え続けること”を強いられる”」

だからハードルが高い、というより、ハードルが積み上がっていく

ここが「実力相場」の正体だと思う。

期待で買われる相場から、
結果でしか評価されない相場へ。

これはエンタメに限らず、AI、SaaS、EVでも同じ現象が起きています。

SaaS … Software as a Serviceの略で、ユーザーがインターネット経由でベンダー(提供企業)のシステムにアクセスし、機能を利用するクラウドサービスです。パッケージソフトをインストールする必要がなく、月額・年額のサブスクリプション制で常に最新の機能が利用できるのが特徴です。 

ただエンタメは、人の感情と流行に依存する分、ブレが可視化されやすいと思います。

一方で、悲観しすぎる必要もないといえるでしょう。

実力相場というのは、
・IPを「量」ではなく「寿命」で回せる会社
・一発屋ではなく、複数の収益源を持つ会社
・制作会社から「IP運営会社」へ進化できる会社

こうした企業にとっては、むしろ追い風です。

夢が剥がれた後に残るのは、筋肉なのです。

脂肪が落ちた市場では、本当に強い企業だけが形を保つのですから。

今のエンタメ株の下落は、衰退というより選別に近く、物語の時代が終わり、構造と継続性が試されているのでしょう。

市場は冷たいが、理屈は驚くほど冷静なのです。

この視点で見ると、
「株価が下がっている」ではなく
「どの幻想が剥がれ、どの実力が残っているか」
を見るフェーズに入った、と言えます。

エンタメは相変わらず人間の根源的な欲望を扱うからこそ、消えることはないのです。

しかし、報われる企業は、ずっと少なくなるでしょう

その静かな選別が、いま起きているのです。

つづく。

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