「7,000万円でFIRE」の違和感。そもそも7,000万円を投資している人って、どれくらいいる?
「資産7,000万円でFIREしました」
you tubeで動画を見ようとすると、そんなサムネイルが一気に流れ込んできますよね。
40代でFIRE。
50代でFIRE。
資産5,000万円でサイドFIRE。
1億円で完全FIRE。
マジですか。
そう思いながら、いつものようにスクロールしていたのですが、、、、
ところが、ある日ふと思ったのです。
でも、……本当に、そんなにいるのか?
いや、もちろん嘘だと言いたいわけじゃありません。
実際にFIREした人は間違いなくいらっしゃるでしょう。
ブログもある。YouTubeもある。Xにもいる。
SNSを見ていると、まるで「7,000万円FIRE」が、それほど珍しいことではないように見えてくる。
でも、なんだか変なモヤモヤした気持ちになるのです。
ふと疑問に思っていたことが、ようやく言葉にできました。
そもそも、資産7,000万円と投資7,000万円ってまったく違うよね??
そこからちょっと各種の信頼性高い数値データをもとに、計算してみることにしました。

まず、「金融資産7,000万円」と「投資7,000万円」は違う
資産と投資。
まったく意味が違ってきますよね。
例えば、金融資産を7,000万円持っている人がいるとします。
預金3,000万円。
株式2,000万円。
投資信託1,000万円。
保険など1,000万円。
これで金融資産は7,000万円。
ところが、FIREの話になると、ちょっと事情が変わってきます。
「7,000万円あります」という話と、「7,000万円を運用しています」は、まったく意味が違います。
つまり、
「7,000万円FIRE」
という言葉を見たとき、
僕たちは無意識に、
7,000万円の金融資産
↓
7,000万円を投資
↓
その運用益で生活
↓
仕事を辞める
というストーリーを想像しています。
でも、本当に資産を全部投資に回せるなんて、そんな人いるのだろうか?
ここから、7,000万円を追いかけてみる
せっかくなので、ゲームのように考えてみたいと思います。
日本の人口を大きな集団だとして、そこから条件を一つずつ加えていきます。
先に結論を書いておくと、この表のような結果となりました。

各種数値のもとになっているのは、今回は、日本証券業協会(JSDA)の最新データ「個人投資家の証券投資に関する意識調査」およびJ-FLEC(金融経済教育推進機構)の年代別クロス集計データ「家計の金融行動に関する世論調査」の「有価証券(株式・投資信託等)の年代別の時価保有額」をベースにしています。
LEVEL 1
金融資産7,000万円以上
まず、ここを通過する人はどれくらいいるのでしょうか。
日本には金融資産を多く持つ世帯が存在しますが、ここには高齢世帯も含まれます。
現役時代にコツコツ積み上げた人だけではなく、退職金を受け取った人もいるからです。
そして相続した人もいれば、長い年月をかけて資産を築いた人もいることでしょう。
つまり、
「7,000万円ある」だけでは、FIRE予備軍とは限らないということです。
ここで第一のふるいが入ります。
ちなみに、7,000万円という基準での金融資産保有人数、世帯ははっきりとは示されてはいませんが、かの有名な富裕層ピラミッド(野村総合研究所)によると、5,000万円~1億円未満の準富裕層世帯は、全体の7.8%とのこと。詳細は記事にしてあるので是非読んでみてください。m(__)m


LEVEL 2
では、その資産7,000万円をもっている人たちのうち、その中で「現役世代」はどのくらいいる???
ここで、さらに条件を追加。
20代、30代、40代、50代。
まだ働いている世代を対象とします。
ここが、重要です。
なぜなら、
FIREという言葉は、本来「これから何十年も働くはずだった人が、労働から離れる」という話だからです。
例えば60代、70代で金融資産7,000万円を持っていることと、
50代で7,000万円を持っていて、
「もう会社を辞めてもいいんじゃないか?」
と考えることでは、まったく意味が違ってきます。
そして、ここで一つのことに気付くのです。
資産額だけではFIREを語れません。
年齢。生活費。住宅費。家族構成。年金。健康。働く意思。
これらが全部絡んできます。
「FIREに必要な金額はいくら?」
という問いが、実はものすごく難しい理由だからです。
LEVEL 3
そして、最大の謎「その7,000万円、いくら投資している??」
さあ、ここから面白くなってきます。
先ほど述べた通り、金融資産7,000万円を持っている人がいたとしても、そのすべてを投資しているとは限りません。
むしろ普通に考えれば、「現金も残しておきたい」となります。
例えば、預金3,500万円、株式・投資信託3,500万円としても、これだって、十分に資産形成をしている。
でも、「7,000万円を投資している人」ではありません。
では、預金1,000万円、株式・投資信託6,000万円。これはかなり投資比率が高いといえます。
では、預金300万円、株式・投資信託6,700万円。ここまで来ると、かなり意味が変わってきます。
そして、株式・投資信託7,000万円。
ここまで来て、ようやく僕が最初に疑問を持った、
「7,000万円を投資してFIREしている人」
という世界が見えてくきます。
いやいや、そんなFIREしましたなんて人、「いなくない??」
やっぱり、FIREしている人なんて周りには皆無と言っていいと思うのです。
表にある通り、
20代から40代までの人たちで、7,000万円投資している人は、日本全体で0.038%、2,667人に1人。
50代で7,000万円投資している人は0.088%、1,143人に1人。
ちょっとほかの数値に置き換えてみて、どれほどこの数値が異常値なのかを表してみます。
・「全校生徒1,000人のマンモス校に、たった1人いるかどうか」
・「50代の社員が1,000人いる大企業の本社ビルで、フロア中を探してようやく1人」
・「東大現役合格率(同世代の約0.2〜0.3%)」のさらに3分の1
つまり、「99.91%の50代は、7,000万円もリスク資産に投じていない」ってことです。

LEVEL 4
そして、最後の扉。「本当に仕事を辞めたのか?」
ここが最後の条件です。
7,000万円を持っている。
そのかなりの部分を投資している。
生活費も計算できている。
それでも、
実際に仕事を辞める人は、どれくらいいるのだろう?
ここがFIREの面白いところだと思う。
資産が十分にあっても、仕事を辞めない人はいる。
仕事が好きだから。
人とのつながりが欲しいから。
まだ稼ぎたいから。
社会との接点を持っていたいから。
「辞めるのが怖い」
つまり、FIREしているってなると、もっと異次元の少なさになるってことです。
はい、「FIREできる資産を持っている」ことと、「FIREする」ことは、まったく別の話なのです。
ここで、最初の疑問に戻る
「FIREしている人、本当にいるのか?」
います。
これは間違いない。
ただ、
SNSで僕たちが見ているFIRE達成者の姿は、日本全体から見ればかなり特殊な存在なのではないか。
ここは慎重に考える必要があるでしょう。
SNSには、自分から資産形成について発信する人が集まりやすい。
FIREした人は、その経験を発信する動機もある。
だからタイムラインを眺めていると、
「FIREしている人、結構いるじゃん」
と思ってしまう。
でも、それは日本全体を映した景色ではありません。
僕たちは「FIREした人が集まっている場所」を見ている可能性があるということ。
これが、いわゆる「生存者バイアス」を考えるきっかけになる。
生存者バイアス(Survivorship Bias)とは、ある特定のプロセスや競争を「生き残ったもの(成功者・残存対象)」だけを観察し、途中で「脱落したもの(失敗者・消えた対象)」を見落とすことで、全体の確率や因果関係を誤って判断してしまう認知の歪み(バイアス)のことです。
FIREを目指す意味とは??
普通なら、「だから7,000万円FIREは難しいですよ」で終ります。
でも、僕はむしろここからが面白いと思っているのです。
ぜひ、考えてみてほしいと思います。
仮に7,000万円を作ることが、ものすごく難しいことだったとすると、じゃあ、
なぜ僕たちは、それを目指すのだろう?
そもそも、7,000万円が欲しいわけじゃない
よく考えてみると、僕が欲しいのは7,000万円という数字ではない。
札束を眺めたいわけでもない。証券口座の評価額を毎日確認して、「7,000万円達成!」と喜びたいわけでもない。
たぶん欲しいのは、自分の時間を、自分で決められる状態。
会社に行く。仕事をする。給料をもらう。生活する。また会社に行く。
もちろん、それが悪いわけじゃない。
僕自身、会社から給料をもらって生活している。
でも、50代になってくると、ときどき考える。
この先の人生も、ずっとこのままでいいのか?

資産は「時間を買い戻すチケット」なのかもしれない
毎月の給料から少しずつ投資する。
配当を受け取る。
株価が上がったり下がったりする。
暴落すれば不安になる。
含み益が増えれば嬉しくなる。
そんなことを繰り返しているうちに、少しずつ資産が増えていく。
その数字を見ながら、ふと思う。
このお金は、単なるお金じゃない。
過去の自分が働いた時間。
我慢した時間。
勉強した時間。
節約した時間。
投資について考えた時間。
そして、まだ見ぬ未来の時間。
そう考えると、
資産とは、過去の自分が未来の自分に渡している「時間のチケット」なのかもしれない。
そう思えてくるのです。
そして、投資を始めると「人生の質問」が増えていく
投資を始める前は、
「どうやってお金を増やそう?」
くらいしか考えていませんでした。
ところが、投資を続けていると、妙なことが起こってくるのです。
「いくらあれば十分なんだ?」
「何歳まで働きたい?」
「会社を辞めたら何をする?」
「そもそも、なんでそんなにお金が必要なんだ?」
「自分は何にお金を使いたいんだ?」
「残りの人生で、本当にやりたいことは何だ?」
どんどん質問が増えてくる。
最初は、
「お金を増やしたい」
だったものが、それがいつの間にか、
「人生をどうしたいんだ?」
に変わっている。
これって、ちょっと面白いことですよね。
FIREは「仕事を辞めるゲーム」じゃないのかもしれない
FIREという言葉を聞くと、
「仕事を辞める」というイメージが強い。
でも、僕は少し違うのかもしれないと思い始めたのです。
FIREとは、
「人生の主導権を少しずつ自分の手に戻していくプロセス」
なのではないかと。
完全に仕事を辞めなくてもいい。
週5日を週3日にしてもいい。
嫌な仕事を断れるようになってもいい。
会社を辞めて、小さな仕事を始めてもいい。
ブログを書いてもいい。
AIを使って何かを作ってもいい。
好きなことを勉強してもいい。
大事なのは、
「会社を辞めたかどうか」ではなく、「自分の人生を自分で選べる余地が増えているか」

だから、私は投資を続ける
7,000万円に到達するかもしれない。
到達しないかもしれない。
そもそも、本当に7,000万円必要なのかも分からない。
でも、投資をやめるつもりはない。
なぜなら、
投資を始めてから、お金について考えることが、そのまま人生について考えることになったから。
資産が増える。
配当が入る。
株価が動く。
暴落する。
また積み立てる。
そのたびに、
「自分はどう生きたいんだ?」
と考える。
もしかすると、
私たちはお金を通じて、人生を学んでいるのかもしれない。
最後に、7,000万円の先にあるもの
最初は7,000万円を探していました。
でも、最後に見つかったのは7,000万円ではありません。
「自分の人生を、自分で選びたい」という気持ち。
だから私は、これからも資産を作っていくのです。
投資をする。
AIを学ぶ。
ブログを書く。
新しいことを試す。
そして、会社員として働いている今の時間さえも、自分の未来のために使っていく。
7,000万円という数字は、あくまで途中にある一つの数字にすぎない。
本当に欲しいものは、その先にある。
自分の時間を、自分で使える人生。
そのために、今日も少しずつ資産を積み上げる。
そして、ときどき立ち止まって考える。
「さて、俺はこの先、何をして生きようか。」
たぶんFIREへの道って、そういうことなんじゃないだろうかと。
お金を増やしているようで、
実は、
自分の人生を考えている。
そんな旅なのかもしれませんね。
つづく。

